毎日の体験を記す場所

東京新聞(中日新聞東京本社)社会部デスクの小川慎一です。原発取材班にいました。取り調べは全面可視化、検察官は証拠リストを開示すべき。金に余裕があるならクール寄付。"All sorrows can be borne if you put them into a story or tell a story about them." Isak Dinesen(どんな悲しみも、それを物語にするか、それについて物語るならば、耐えられる)

「など」は思い切って削る

 「など」が多い文章は読みにくい。できるだけ少なくしたい。だが、記事を短く書こうとすると、省略の「など」を使ってしまいがちだ。では、どうすればいいか。思い切って、「など」を削ってみよう。それでも意味は通じるし、たぶん問題ない。

 京都新聞の「DV対策、若年層に啓発 大津の審議会、基本計画を答申」のリードを見てみる。

 大津市男女共同参画審議会は28日、配偶者などからの暴力防止や被害者保護に関する基本計画(DV=ドメスティックバイオレンス=対策基本計画)をまとめ、越直美市長に答申した。被害者からの相談体制の充実や、中高生などの若年層に向けた啓発などに取り組むよう求めている。DVに特化した基本計画を策定したのは、滋賀県内では甲賀市に次いで2番目。

 短いリードに「など」が3回出てくる。できるだけ減らそう。最初の「配偶者など」は基本計画の名称なので削れない。残り2つを削れるだろうか。2秒考えた。削れる。丸かっこの内容がよく分からないので、以下のように変えた。

 大津市男女共同参画審議会は28日、配偶者などからの暴力(ドメスティック・バイオレンス=DV)防止や被害者保護に関する基本計画をまとめ、越直美市長に答申した。被害者からの相談体制の充実や、中高生に向けた啓発に取り組むよう求めている。DVに特化した基本計画を策定したのは、滋賀県内では甲賀市に次いで2番目。

  基本計画はリードにあげた2つ以外の内容も求めているから、「など」を使ったのだろう。ただ「など」の部分は本文に書けば良い。リードに入れたものは記者が重要と判断したからだろう。強調したいならば、なおさら「など」は必要ないのではと思う。それでも「やっぱり、入れておかないとおかしい」と思うなら、「中高生に向けた啓発など」にすればいいが、私がキャップかデスクから削ってしまうだろう。

 ところで、毎朝眺めるのを楽しみにしている「伊吹山」で5月から入山料を導入するそうだ。京都新聞伊吹山に入山料300円 5月、任意で試験導入」。遠くから見ても美しい山なのだが、花畑があるとは知らなかった。一度は登ってみたい。「京滋」という表現に地元紙を感じる。

 年間30万人が訪れる京滋最高峰の伊吹山(1377メートル、滋賀県米原市)で5月から1人300円の入山協力金を試験導入することを28日、滋賀県米原市などでつくる伊吹山自然再生協議会が決めた。国の天然記念物の山頂付近「花畑」をはじめ貴重な自然の保護に充てるとし、試験状況をみて2015年度の本格導入を検討する。入山料徴収は京滋で初めて。

 

現代語訳 日本国憲法 (ちくま新書)

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「逮捕容疑」読み比べ

 冷凍食品に農薬が混入されていた事件で、群馬県警は25日、偽計業務妨害の疑いで男を逮捕した。容疑者が浮上した経緯は分からないが、各紙の記事で、「逮捕容疑」の部分を読み比べてみる。

朝日 http://digital.asahi.com/articles/ASG1T5QSHG1TUTIL01B.html

 発表によると、容疑者の逮捕容疑は、アクリ社の群馬工場内で、昨年10月3日ごろから同7日ごろまでの間に、4回にわたって工場で製造している冷凍食品にマラチオンを混入し、工場に冷凍食品を回収させたり、操業を停止させたりする措置を余儀なくさせ、偽計を用いて業務を妨害したというもの。

朝日はその後、次のように差し替えたようだ。

 発表によると、容疑者の逮捕容疑は、群馬工場内で昨年10月3~7日に4回、冷凍食品計4袋にマラチオンを混入し、冷凍食品を回収させたり、操業を停止させたりして、工場の業務を妨害したというもの。

毎日 http://mainichi.jp/select/news/20140126k0000m040015000c.html

 逮捕容疑は、昨年10月3日〜7日、同工場内で4回にわたって冷凍食品に殺虫剤の農薬を混入し、同工場に商品の回収や操業停止などを余儀なくさせ業務を妨害したとしている。

共同 http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2503J_V20C14A1CC1000/?dg=1

 逮捕容疑は、昨年10月3~7日ごろ、群馬工場内で4回にわたり、冷凍食品に農薬を混入し、工場の操業停止を余儀なくさせるなど、業務を妨害した疑い。

 産経 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140125/crm14012519130009-n1.htm

 逮捕容疑は、平成25年10月3日ごろから7日ごろまでの間、前後4回にわたってアクリ社の工場内で冷凍食品にマラチオンを混入し、工場の業務を妨害したとされる。

 各紙とも偽計業務妨害容疑なので、逮捕容疑でも「業務を妨害した」とわざわざ書いている。朝日は「偽計を用いて」とまで書いているが、これを多くの読者が理解できるのか疑問だ。こんな風にしてみれば良いのではないか。

オレ版> 逮捕容疑は、昨年10月3日〜7日、同工場内で4回にわたり、冷凍食品に農薬を混入し、工場に商品の回収や操業停止などを余儀なくさせたとされる。

 商品回収や操業停止を余儀なくさせたということが分かればよいのではと思う。警察の発表文通り書けば間違いはないだろうが、それで良いのか考えたいところ。

で、どんな菓子パンなのよ?

 静岡新聞いちごクリームパン発売 清水西高生とコンビニ開発」の記事。リードはこんな感じである。

 県立清水西高ライフデザイン部がコンビニチェーン「サークルKサンクス」と共同開発した菓子パン「いちごクリームパン」が21日、県内のサークルKとサンクス計約370店で発売された。静岡市清水区の店舗では同部の生徒が試食イベントを開き、中身とパッケージにアイデアを盛り込んだ新製品をPRした。

 「中身とパッケージにアイデアを盛り込んだ新製品」。どんな菓子パンなんだろう。本当はリードにどういう特徴があるのかを書くべきだ。本文には、どんなアイデアが盛り込まれたと書かれているのか。

 新製品はイチゴ風味の生地でホイップクリームとイチゴジャムを包んだ。クリームには丹那牛乳(函南町)を使用。パン生地に対するジャムとクリームの量の検討を重ね、甘酸っぱさがしっかりと味わえるようにしたという。包装も部員のデザインが基本になった。

 この文章で、生徒たちのアイデアが盛り込まれた菓子パンをイメージできるだろうか。私にはできなかった。「包装も部員のデザインが基本となった」と書いているが、包装の写真もなきゃ、イラストがあるのかないのかさえも分からない。記者は菓子パンを見て、食べたのだろうか?というか、丹那牛乳って何なの?この商品をPRしようという心意気をまったく感じない。

 ちなみに高校のサイトで確認したところ、「ライフデザイン部」ってのは部活動らしい。高校にそういう部門があるのかと勘違いした。

 自分を棚に上げるが、この記事は再取材して書き直しが必要だろう。

4回目・正式名称にこだわらない

 岐阜新聞市町村職員ら観光への活用法学ぶ 県「セカイカメラ」データ」のリード。

 県内市町村の観光担当職員らが、オープンデータの活用法などを学ぶセミナー「オープンデータ時代の観光×ITの戦略づくり」が20日、大垣市加賀野のソフトピアジャパンで開かれた。

 オープンデータという言葉を繰り返し使ってまで、セミナーの正式名称にこだわる必要あるのだろうか?この文章、「職員らが、」で始まっているけど、主語が「セミナー」なんだよね。主語をセミナーのままにするならば、こんな感じの方が良い。

直し例1> オープンデータの活用法を学ぶセミナーが20日、大垣市加賀野のソフトピアジャパンであり、県内市町村の観光担当職員らが参加した。

 人を主語にする場合は、以下のようにしたい。

直し例2> 県内市町村の観光担当職員らが20日、大垣市加賀野のソフトピアジャパンで開かれたセミナーで(or に参加し)、オープンデータの活用法を学んだ。

3回目・正式名称にこだわらない

 岐阜新聞次世代へ恵み継承 県民会議が「清流の国ぎふ憲章」案」の記事のリード。

 県が本年度から本格的に取り組む「清流の国ぎふ」づくりについて、県内各界代表らが意見を交わす第2回「清流の国ぎふ」づくり推進県民会議は20日、岐阜市橋本町のじゅうろくプラザで開き、清流の国ぎふの理念を表す「清流の国ぎふ憲章」を大筋でまとめた。清流の恵みに感謝し、次世代に守り伝えていくメッセージとした。

 厄介だ。「清流の国ぎふ」だらけ、4回出てくる。正式名称にこだわりすぎだ。さすがにここまで多いと考えものだ。なんとかしたい。ちなみに中日新聞のリードはこんな感じだった。

 豊かな自然や人材を活用して地域活性化を目指す県の「清流の国ぎふ」づくりで、関連施策に対して県側に意見する推進県民会議の会合が二十日、岐阜市内で開かれ、清流の国の理念をまとめた憲章案が示された。

 これも苦労しただろうと思う。でも、かなりコンパクトになっている。どちらが良いか。当然、後者である。

 正式名称にこだわらないというのは、案外重要なことだと思う。読者に簡潔に伝えるための工夫のひとつだ。中日新聞のリードの「示された」という表現が私の趣味ではないので、以下のように変えてみた。

 豊かな自然や人材を活用して地域活性化を目指す県の「清流の国ぎふ」づくりで、関連施策を県側に意見する推進県民会議の会合が二十日、岐阜市内であり、清流の国の理念を憲章案にまとめた。

 日々、文章力を磨きたい。 。。

続・正式名称にこだわらない(お手上げ編)

 岐阜新聞県内、ツキノワグマ増加 捕獲上限を撤廃、県が管理2期案」のリード。

 県は、ツキノワグマの保護管理計画第2期案を作成した。クマの生息数が増加している現状を踏まえ、第1期で定めていた捕獲の上限数を撤廃。上限ではなく自粛を要請するための「捕獲数基準」と定め、捕獲については柔軟に対応することなどを盛り込んだ。

 「保護管理計画第2期案」という正式名称を出す必要を感じない。 重要なのは「捕獲上限の撤廃」と、その理由だ。それを書けばいい。

 ただ、この記事は本文を読んでも「?」が浮かびまくる内容だ。第1期計画はいつできたのか。その作成時から、クマがどれぐらい増えたのか。人や農林業への被害は増えたのか。これまでの捕獲上限数はいくつなのか。上限数を撤廃する代わりの案として199頭という基準数が示されているが、これまでの上限と同じ頭数なのか。多いのか、それとも少ないのか。。。

 お手上げである。直せません。

 詳しくは、岐阜県のHPにある「 特定鳥獣保護管理計画(ツキノワグマ)」を参照。

正式名称にこだわらない

京都新聞第三者機関、二つ常設 滋賀県いじめ防止基本方針素案」のリード。

 滋賀県教育委員会は20日、県の今後のいじめ防止施策の指針となる「県いじめ防止基本方針」の素案を公表した。常設の第三者機関を県教委と知事部局にそれぞれ設置し、自殺など重大な事態が起きた際の調査を徹底することや、保護者への情報提供の在り方などを盛り込んでいる。

 「県いじめ防止基本方針」という正式名称にこだわり、これを同じような言葉を使って説明しているため長くなっている。この場合、正式名称にこだわる理由がどこまであるんだろうか。こだわらなければ、短くできる。

 「常設」と「設置」もだぶり。常設とは、常に設置しておくことだ。

 「調査を徹底」という目標の次に、「情報提供の在り方」と続けるのは良くない。どんな在り方にしようとしているのか。そこをざっくりと書くべきだ。ということで、こんな感じにした。

 滋賀県教育委員会は20日、いじめ防止策の基本方針案を公表した。第三者機関を県教委と知事部局にそれぞれ常設し、自殺など重大な事態が起きた時には調査を徹底して、保護者に説明を尽くすべきだと強調している。

 京都新聞の記事はブログを始めてから、よく読むようになった*1。京都と滋賀に詳しくなりつつある。いかん、中日も滋賀で出ているんだった。読もうっと。

*1:家族が京都にいるからという面も大いにある