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毎日の体験を記す場所

東京新聞(中日新聞東京本社)社会部記者の小川慎一です。原発取材班。取り調べは全面可視化、検察官は証拠リストを開示すべき。金に余裕があるならクール寄付。"All sorrows can be borne if you put them into a story or tell a story about them." Isak Dinesen(どんな悲しみも、それを物語にするか、それについて物語るならば、耐えられる)

テーマと内容を絞って書く

 新聞の紙面を独占するほどの記事を書ければ良いが、ほとんどの場合そうではない。紙面は限られている。原稿はコンパクトにし、内容を絞り込まないといけない。

 今回取り上げるのは、中日新聞「津市民版」に掲載された「安全に楽しく 津の魅力 再発見 ポケモンGO遊び方講習会」という記事。これはこれで良いのだが、もうちょっと工夫すれば、より良くなるのではないかと思う。

 スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」を地域活性化につなげるイベントが六日、津市の中心市街地であった。親子連れから七十代の男性まで約百人が、安全な遊び方を学びながら、観音公園などを巡ってポケモン集めを楽しんだ。

 津市まん中広場に参加者が集まると、最初に「個人情報を守ろう」「偽アプリに注意」などとゲームで遊ぶ際の注意点が書かれたプリントが配られた。

 その後、大門商店街や大門大通り商店街、観音公園、お城公園を散策。同行したイベントスタッフのアドバイスも受けながら捕獲用のアイテムを入手し、スマホ画面に出現したポケモンを捕まえた。

 猛暑の中、屋外を二時間歩き続けたため、スタッフが参加者に木陰で積極的に休むよう指導。プレーヤー同士がポケモンを対戦させる「ジム」ではニックネームが公開されるため、本名が分からないものにするなど、遊びながら安全な使い方も促した。

  イベントは市の依頼を受けて、津市NPOサポートセンターと、NPO1124(いいつし)が企画した。NPOによると、ポケモンGOの遊び方の講習会は東海地方では初という。サポートセンターの川北輝理事長は「安全に気を付けながら、ゲームを通して津の魅力を再発見してほしい」と話した。

  リードに「地域活性化につなげるイベント」とあるが、地域活性化につながるようなことが本文中に書かれていない。記事の内容は全体的に「安全な遊び方」に重点が置かれている。そうならば「歩きスマホ」の危なさも指摘すべきではないだろうか。それほど長い原稿が掲載できないであろう紙面事情を考えると、「地域活性化」か「安全な遊び方」のどちらかにテーマを絞って書かないといけないだろう。

 4段落目に「ニックネームが公開されるため、本名が分からないものにするなど、遊びながら安全な使い方も促した」とある。これはアプリのインストール前に注意してもらえればいいが、本名が分かるようなニックネームにして既にゲームを始めていた場合には意味がない。もしかしたら、イベントの冒頭に説明があったのかもしれないが、段落が時系列になっているので、途中で説明がされたような印象を抱かせる。「安全な遊び方」をなんとか書かないといけないと思って、強引に付け加えたのではないか。ついでに、「積極的に休む」というのはこなれない表現だと思う。

 最終段落も説明不足が気になる。NPO「1124」とはどんな団体なのか。例えば「まちづくりに取り組むNPO」ぐらいは書いた方が良い。この段落では、「遊び方の講習会は東海地方では初という」ともあるが、「初めて」にどれほどの意味があるのか。必要ない一文と思う。筆者やデスクがどんな意味を込めようとしたのか分からない。では、どういう原稿にすれば良いのか。まずリードはこんな風にしてみた。

 大人気のスマートフォン用ゲーム「ポケモンGO」。歩きながらだけではなく、自転車や車に乗りながら遊ぶ人も多く、思わぬ事故を招く恐れがある。津市のNPOは七日、市中心部でゲームの講習会を開き、参加者に安全な遊び方を伝えた。

 そして、2段落目。

 気温三〇度を超えた猛暑の中、津市真ん中広場には、初めてゲームをする人を中心に親子連れから七十代の男性まで●人が集まった。主催した津市NPOサポートセンターとまちづくりに取り組むNPO「1124(いいつし」のスタッフらから「●」「●」と注意を促され、街歩きを開始した。

 と、こんな感じで続ける。「ジム」の話は必要ないのではないかとも思う。

 「安全な遊び方」をテーマにした場合は、2時間の街歩きの中で、参加者や記者が「危ないかも」と思ったことを書いた方がよい。熱中症を避けるために日陰で休んだり、水分を十分に補給したりということも重要だろうが、もっとほかにないのだろうか。現場で取材をしていたならば、きっとあるはずだ。

 一方、「地域活性化」をテーマに書くならば、取材を主催者に重点を置く必要がある。地域活性化のためにポケモンGOを利用する狙いは何なのか。また参加者からは、例えば「ポケモンを捕まえるために、地元をもうちょっとゆっくり歩いてみたい」とか感想が取れれば原稿は書きやすい。ただ思い通りに答えてくれるかどうかは分からないし、たいていそうはいかない。

 ひとつのイベントでもどのようなテーマで書くのかを考えると、誰に重点を置いて話を聴くべきかが変わってくる。デスクが無理な注文をして「こういう風に書け」と指示をしてきた場合でも対応できるように取材しておくことは大事だが、「現場に行ったのだから、こういう風に書きたい」と言い張ることも重要だ

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