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東京新聞(中日新聞東京本社)社会部デスクの小川慎一です。原発取材班にいました。取り調べは全面可視化、検察官は証拠リストを開示すべき。金に余裕があるならクール寄付。"All sorrows can be borne if you put them into a story or tell a story about them." Isak Dinesen(どんな悲しみも、それを物語にするか、それについて物語るならば、耐えられる)

原発、核燃料サイクル、再生エネ 自民党総裁選の討論会で語られたこと

2021年9月18日、日本記者クラブ主催の自民党総裁選候補者の討論会で、河野太郎氏、岸田文雄氏、高市早苗氏、野田聖子氏4人は、エネルギー政策について何を語ったのか。各候補が互いにやりとりする場面では、脱原発を持論とする河野氏に質問が集中した。どんなことが語られたのか、記録しておきたい。

これまで語られたことは、東京新聞で記事にしました。

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高市(vs河野)「核融合炉に研究開発費を投入すべき」

高市原子力発電を当面は再稼働といっていたが、当面はどれくらいの期間か。デジタル化による消費電力量が急増していくことが予測されている。将来的な基幹となるエネルギー政策について伺いたい。

(河野)今の日本の原子力発電所、耐用年数40年、運転延長しても60年です。だんだん耐用年数きたものは廃炉にしていくということになれば、原子力はゆるやかに減っていく。その間にやらなければならないのは気候変動対策でカーボンニュートラルを実現するということですから、まず石炭、石油の発電をなるべく早く止める。天然ガスもそういつまでも続けるわけには残念ながらいかないというのが現実です。残された選択肢は、まず省エネでエネルギー消費をどこまで減らすことができるか。今回のエネ基でも、再生可能エネルギーの最優先の原則が盛り込まれました。再生エネを伸ばしていくこと、これはエネルギー供給を増やすだけではなく、日本の新しい産業にもつながっていきます。その足らざる部分は原子力を再稼働して補っていくしか、他には方法が今のところはないと思います。再生エネをしっかりと伸ばしていく、日本の経済の新しい芽にしていくことになると思います。

高市)私はむしろこれからの安定的なエネルギーとして、まずは一番近いのは日本企業も参加して、アメリカなどで開発しているSMR、小型炉心のものですが、安全保障上、この間石川県沖にミサイルが落ちましたので、地下に立地すること。その次の段階で、燃料が重水素トリチウム、高レベルの放射性廃棄物を出さない核融合炉、ここにしっかりと研究開発費を投入していくべきと思います。これが日本の産業の安定、安定的なエネルギー供給につながっていくと考えている。

野田(vs河野)「エネルギーは安定供給が前提」

(野田)エネルギー政策について。かつて小泉純一郎総理が郵政民営化ですさまじい選挙をした。小泉総理は郵政民営化で選挙を勝ち、速やかに民営化にスタートを切った。ちょっと前までの河野さんのイメージはそこにダブっていて、脱原発。河野さんになったら速やかに原発が止まって、なくなっていく印象を国民の多くが持ったと思う。それに対して原発に恐怖や懸念を持っている人にとっては、すごくうれしいことだったと思う。最近は修正されたのかなと。それは結構なことだと思う。私は生活者の一人として人工呼吸器を使っている、息子が。安定供給を保証できないことはあってはならない、電力は。総理になったら、速やかに過去の発言を実行するのか。

(河野)福島で事故が起きた時に私は党本部にいましたけど、その場にいた人たちは私の方を向いて、「おまえがいった通り事故になったな」と言ったのですけど、私はそんなことを言ったことは一度もない。私がいっている脱原発は、耐用年数がきたものは速やかに廃炉になる。緩やかに原子力から離脱していくことなる。と言っていることだけで、それが以外のことではない。先ほど説明した化石燃料をまず止めなければいけない。省エネと再生エネを増やして、足らざるところは原子力で補うけども、この耐用年数の間に再生エネを増やしていかなければいけないとずっと言っている。以前、北海道の胆振地震が起きた時に停電になりました。あれは大きな発電所に依存して、そこに問題が起きた時に大きな停電になった。大きな発電所に依存していたら安定供給ができるというわけではない。再生エネのように広く拡散した発電能力を持っていることが、いざという時の安定供給に強い。

(野田)私はポートフォリオといって、エネルギーは安定供給が前提だと思っている。その時代にあるものをしっかりと形にはめていく。私は原発が主という中で、ライフワークの地熱発電はなかなか注目してもらえなかった。ようやくこのところ、河野さんのおかげもあるのか、地熱発電経産省も積極的に動きがある。いろいろなことを考えて、地熱は世界埋蔵量3位だから、自分の国にあるエネルギー。お金がかかるとか理由をつけて進まなかったことを、進める必要がある。

河野(vs野田)「原子力産業はあまり先が見通せない」

(河野)これまで再生エネを増やせなかったのは、これは原発に重きがおこうという力が働いていた、再生エネへの投資ができなかったのは、そこが見据えることができなかった。たとえば、九州は無保証で再生エネの出力抑制が行われている。しかし実際は九週間内にある石炭を止めて、再生エネを利用すれば、無保証の出力抑制をしなくてすむ。しかし残念ながら昔ながらのルールが適用されば、出力抑制がされているのが現実です。今回のエネルギー基本計画で、再生エネ最優先の原則が打ち出されて、地熱発電環境省が立場を変えて、国立、国定公園でも一定のルールのもとで開発できるようになった。地熱のポテンシャルはアメリカ、インドネシアに次いで世界3位の安定供給源。野田さんは将来も原子力に頼っていくのがいいと思うのか。

(野田)私はとても現実主義者で、安定供給がきちんと担保できる今のポートフォリオが前提。毎年進んでいくのでしょう、メタンハイドレードもありました、天然ガスもいろいろその都度見直しいくことが、国民への安心安全の提供だと思っている。

(河野)原発はコストが見直され、再生エネが安いことは明確になった。これは専門家が以前から言っていたこと。これに様々な再処理工場の廃炉コストを入れれば、原子力はまだまだ高くなるのだろう。世界中で再生エネのコストが一番安い国がどんどん増えている。日本もそうなっていく、その差は開いていく。原子力の産業はあまり先が見通せない。その中で再生エネは日本初の新しい技術が出れば、それは世界中に日本から出していく、日本の産業が新たに巣立っていくことになる。今度のエネルギー基本計画が明確にうたったように、再生エネ最優先の原則で日本のエネルギーはやっていかなければならないと思う。

岸田(vs河野)「核燃サイクルを止めるとプルトニウムがどんどん積み上がる」???

(岸田)2050年カーボンニュートラル、私も共有する。クリーンエネルギーを用意しなければならない。再生エネ最優先である、これもおっしゃる通り。なおかつ、クリーンエネルギーの選択肢として、原発の再稼働を認めるとおっしゃった。ここもなるほどと思います。問題はその先で、原発の再稼働を認めたが、核燃料サイクルを止められるということをおっしゃったと聞いた。それは両立するものか。

(河野)今の原子力発電の最大の問題は、核のゴミの処理が決まっていない。使用済み核燃料プールが再稼働すると早い時期に一杯になってしまう。そうなると、原発が止まってしまう。今までは青森県の再処理工場に移動するということでプールが一杯になるのを防いできた。再処理してもプルトニウムの使い道がなかなかない。本来は高速増殖炉で燃やすのが何十年来の政策だったが、もんじゅ廃炉となった。使い道はMOXになるかもしれないが、ヨーロッパにあるプルトニウムを使って生産している。再処理をしても使い道がない。六ヶ所村以来、青森県にはいろいろ協力してもらっている。その地域のご理解をしっかりといただいた上で、今後のことを決めていかないといけない時期にきている。

(岸田)核燃サイクル止めると、核燃サイクルで除去される高レベルの核廃棄物がそのままになる。再処理すると、廃棄物の処理期間は300年と言われている。高レベルの核廃棄物は直接処分すると10万年かかると言われている。この処理の問題をどう考えるのか。核燃サイクルを止めるとプルトニウムがどんどん積み上がってしまう。日米原子力協定をはじめ、外交問題にも発展するのではないか。核燃サイクルを止めるとなると、別の問題が出てくると私は思っている。

注意 東京新聞に掲載した記事で触れなかったが、岸田文雄氏の「核燃サイクルを止めるとプルトニウムがどんどん積み上がってしまう」という発言は間違っている。なぜこんなことを言ったのだろうか?核燃料サイクルを中止すれば、再処理でプルトニウムを取り出さないので増えない。今ある分を国内でどう消費するのか、そもそもできるのかを考えるべき。

河野(vs記者側の代表質問)「核のゴミの現実的な処分方法を議論した方がいい」

(記者)使用済み核燃料を地中に埋めて最終処分しないといけない。河野さんの場合は、地域のご理解を得てといっていたが、理解は得られるのか。河野さん自身が地域に乗り込んで理解してくれ、ということまで考えた上での手仕舞いなのか。

(河野)核燃料サイクルやるやらない、原子力発電をやるやらないに関わらず、すでに核のゴミは出ている。今あるものをどう処分するかは、誰であろうとやらないといけない。経産省の説明に齟齬があるのは、使用済み核燃料だとこうなるけども、高レベル放射性廃棄物だとこうなると説明するが、再処理すると高レベル廃棄物とプルトニウムが出てくる。処分しなければならないのは、廃棄物だけではなく、プルトニウムも。どこかで最終処分、地層処分をする場所を探さないといけない。技術的な進歩があって10万年かかるものが本当に短くなるなら、そこは戻して処分をしてやればいいが、現時点では技術がない。それを放っておいたまま当分このままでいくのか、現実的な最終処分方法を考えるのか。私は現実的な処分方法をテーブルにのせて議論した方がいいと申し上げている。

(記者)最終処分場を決めるには河野さんが責任を持ってやるということか。

(河野)これは国がやらなければ、民間の電力会社がやったことですというわけにはいかないだろう。国の責任である程度どうするかをやらなければいけなくなっている。

日本の原発はどうなる?エネルギー基本計画の見直し案が示していること

9月20日東京新聞紙面とWebに記事も配信しました。核燃料サイクルについて、私の認識は河野さんとほぼ同じ。中止すべきで、早く議論をすべきと考えています。エネルギー基本計画の見直し案についてはパブリックコメントが10月4日までなので、皆さんも意見を政府にぶつけてみましょう。記事中に案内があります。

www.tokyo-np.co.jp

日本記者クラブ開催の討論会は、動画が公開されています。


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