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東京新聞(中日新聞東京本社)社会部デスクの小川慎一です。原発取材班にいました。取り調べは全面可視化、検察官は証拠リストを開示すべき。金に余裕があるならクール寄付。"All sorrows can be borne if you put them into a story or tell a story about them." Isak Dinesen(どんな悲しみも、それを物語にするか、それについて物語るならば、耐えられる)

1日の汚染水発生量の計算式がブラックボックスならば処理水発生量から計算すればいい、という話

福島第一原発で発生が続いている汚染水について、東京電力は4月末に2021年度の1日の平均発生量を130トンと発表した。この件について、東京新聞原発取材班の同僚である小野沢健太記者は「汚染水の発生量をどのように試算しているのか。計算式があるならば示してほしい」と東電に質問と要望をした。ところが広報担当者は即答できず、「計算式についてはわかりやすく説明できるか、検討させてもらいたい」と述べた。どのように算出しているのかも示さないのに、1日130トンになったという結果だけ出してくる。汚染水の発生量についてはその計算過程がブラックボックスで、東電の裁量で増やしたり減らしたりできるのではないか、という疑念が正直消えない。そんなことは、前回も書いた。 ogawa-s.hatenadiary.jp

東電の公表資料を使って2018年度以降の処理水の増加量から「1日当たりの処理水」を算出。これを東電が公表している「1日当たりの汚染水」と比較すると、表の通りになる。21年度は、日々の汚染水の発生量よりも、処理水の発生量が少ない。なぜこういうことが起きているのか、東電に聞いてもよくわからない。ただ、東電が講じてきた建屋への雨水流入を防ぐ対策などの効果が出てきたのは間違いなく、そこは東電の実績である。

東電は汚染水の発生量が減ったことで、保管タンクの満杯時期を「23年春ごろ」から「23年秋ごろ」に見直した。 www.tokyo-np.co.jp

これは21年末に私が東電の公表資料を基に処理水の発生量を計算して、タンク満杯になる時期は「23年9月初めごろ」と指摘したのと同じような結果となった。 www.tokyo-np.co.jp

ということで、汚染水の発生量という東電ブラックボックスに頼らなくても、公表データを基に計算すればいい。22年4月21日時点の保管量に、1日当たりの処理水発生量を足していけば、いつタンクが満杯になるのか目安をつけるのは簡単となる。グラフにすると、下のようになる。1日130トンだと、満杯は「23年12月」。1日100トンにまで抑えることができれば、満杯は「24年6月」にまで伸ばせる。汚染水発生を抑制する対策がうまくいけば、これぐらい伸ばせるのだが、処理水放出を急ぎたい、放出ありきの東電がこういう試算を示すことはない。