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東京新聞(中日新聞東京本社)社会部デスクの小川慎一です。原発取材班にいました。取り調べは全面可視化、検察官は証拠リストを開示すべき。金に余裕があるならクール寄付。"All sorrows can be borne if you put them into a story or tell a story about them." Isak Dinesen(どんな悲しみも、それを物語にするか、それについて物語るならば、耐えられる)

福島第一原発で「処理水」は毎日どれくらい発生しているのか?

東京電力福島第一原発では、汚染水の発生が続いている。これは高濃度の放射性物質が含まれている水で、構内で多核種除去設備(ALPS)を使って多くの放射性物質を取り除いている。取り除けないトリチウムを多く含む水は「処理水」としてタンクに保管されている。政府と東電は、この処理水を2023年春ごろから海に放出処分する方針を決めた。この時期の根拠とされているのが、東電が「23年春ごろにタンクが満杯」になるというシミュレーション結果だ。

これは日々、汚染水が150トン発生していることを前提にしている。汚染水の発生量については、東電が独自に計算していてブラックボックスなので、私が検証のしようがない。そこで処理水の発生量について、東電が毎週月曜日に公表している「福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況」を基に調べてみた。

その結果は2021年12月30日に東京新聞にて記事を掲載した。21年は雨が多かったにもかかわらず、処理水の発生量がかなり減っている。 www.tokyo-np.co.jp で、この試算に基づくと、東電がいう「23年春ごろにタンク満杯」ってのはちょっと信じ難い。 www.tokyo-np.co.jp

なぜこういうことになったのか。実は21年になって東電がいう汚染水の発生量よりも、処理水の発生量が減っている。この理由がよくわからないので取材を進めているところ。実際にタンクにたまるペースが落ちているのだから、東電は「23年春ごろ満杯」という想定を見直すべきだろう。ところが、なかなか見直さないし、見直す気がなさそうである。汚染水の発生量抑制対策が進み、処理水が増えるペースが落ちていることは「良いこと」なのに、それを前提としないところに、東電のいやらしさというか、悪質さがあるように思える。

22年1月から5月初旬までの処理水の発生量を、20年と21年の同時期と比較してまとめてみた。雨が少ないこともあり、1日当たりの発生量は100トンを切っている。ちなみにだが、4月14日時点のタンク残り容量を起点にして、昨年並みの1日当たり130トン増えていった場合、満杯になるのは「23年10月中」。春ごろよりも半年ぐらい余裕ができるわけだ。東電が、海洋放出には地元理解が重要というなら、満杯になるまでの期限は延びたと正直にいって話し合えばいい。